ポリエチレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE
2026.09.07

2026年4月、イタリア・ミラノで開催された世界最大級のデザインイベント「ミラノデザインウィーク」において、三菱ケミカルグループとPOETIC CURIOSITYは共同展示「Curious Matters」を開催しました。
本展示では、先進素材が持つ可能性をデザインの視点から『再発見』し、素材の機能や性能だけではない新たな価値を提示することを目指しました。三菱ケミカルグループの素材技術とPOETIC CURIOSITYの創造的な視点を融合することで、素材と社会との新しい関係性を探求しました。
本プロジェクトでは、展示作品そのものだけでなく、作品を支える輸送や運営のプロセスにも目を向けました。そこから見えてきたのが、展示会の裏側にある「資材廃棄」という課題です。

展示会では、作品や製品に加え、展示台やパネル、サイン類など多くの資材が使用されています。しかし、その多くは会期終了後に役割を終え、廃棄されています。
近年は展示会業界全体において、資材の再利用や循環を前提とした運営が求められていますが、なお多くの課題が残されています。
その課題の中でも、私たちが着目したのは「梱包材」です。
作品を安全に輸送するためには大量の梱包材や緩衝材が必要となります。特に海外展示会では、現地で自由に廃棄できない場合も多く、撤収時には限られた時間の中で再梱包作業を行わなければなりません。その結果、作業負荷の増大や梱包品質のばらつきといった課題が生じています。
さらに、国際輸送に伴う環境負荷も無視できません。梱包材は作品を守る重要な役割を担う一方で、使用後の取り扱いや資源循環のあり方については十分に議論されてきませんでした。
そこで私たちは、廃棄物の削減だけでなく、梱包材そのものを資源として循環させる新たな仕組みの提案に取り組みました。

こうした課題に対し、本プロジェクトでは3Dプリント用ポリエチレンを活用した循環型梱包材を提案しました。
今回の3Dプリント造形による梱包材の材料に使用したポリエチレンは、作品を保護するために十分な強度を備えながら、作品を傷つけにくい柔軟性も併せ持っています。また、摩耗による粉塵や破片が発生しにくいため、作品への影響を抑えながら安全な輸送を実現できます。

さらに、本材料は3Dプリンティングとの相性にも優れており、造形時の反りが少なく、層間接着性にも優れるため、高精度で安定した造形が可能です。これにより、作品ごとの形状に合わせたオーダーメイドの梱包材を製作することが可能です。今回製作した梱包材は、単に作品を保護するだけでなく、撤収時にパーツを組み合わせるだけで簡単に再梱包できる構造を採用しました。これにより、作業時間を短縮するとともに、作業者の経験や技量による品質差を抑え、安定した輸送品質の確保にも繋がります。

これらの特長を持つ日本ポリエチレンの3Dプリント用ポリエチレンは、今回の展示作品を保護する梱包材として活用されました。しかし、本取り組みの価値は作品を守ることだけではありません。
一般的な梱包材は展示終了後にその役割を終えると廃棄されてしまいますが、ポリエチレンは熱による劣化が比較的小さく、再利用に適した素材です。そこで本プロジェクトでは、使用後の梱包材を回収・粉砕し、再び原料化したうえで3Dプリント用材料として活用する循環モデルを提案しました。展示会ごとに異なる作品に合わせて梱包材を設計し、使用後は資源として回収し、新たな梱包材へと生まれ変わらせることができます。
これにより、作品保護と資源循環を両立しながら、展示会やアート輸送の現場が抱える廃棄物課題の解決に貢献できる可能性があります。梱包材を「使い捨ての資材」ではなく、「次の展示会へ価値をつなぐ循環資源」として捉え直したことが、本プロジェクトの大きな特徴です。

本プロジェクトは、単なる素材展示ではありません。
POETIC CURIOSITYの感性と三菱ケミカルグループの素材技術が融合することで、「循環」そのものをデザインの対象として捉え直した取り組みです。
今回の協業を通じて、私たちは素材の価値を改めて見つめ直しました。これまで重視してきた機能や品質に加え、素材がどのように使われ、人々と関わり、次の価値へと繋がっていくのかというプロセスやストーリーにも大きな価値があることを再認識しました。
また、これまで廃棄物として扱われてきた資材にも、新たな役割や可能性を見出すことができました。
展示会では作品そのものに注目が集まりますが、その背景には作品の製作、輸送、設営、撤収といった多くの工程が存在します。そして、それらを支える資材の多くは、役割を終えた後に廃棄されています。なかでも梱包材は、作品を安全に会場へ届けるために欠かせない存在でありながら、展示終了後にはその価値を失いがちです。本展示では、素材の機能や性能だけでなく、「使った後も価値が循環する仕組み」そのものをデザインの対象としました。役割を終えた資材を単なる廃棄物として捉えるのではなく、次の価値を生み出す資源として循環させる。その循環のプロセスを可視化することも、本展示が伝えたかった重要なメッセージの一つです。
素材を単なる機能材料としてではなく、人や社会との関係性の中で捉え直す。そして、その循環までも含めてデザインする。
三菱ケミカルグループとPOETIC CURIOSITYの共創によって生まれた本展示は、循環型社会における新たな価値創造の可能性を示す試みとなりました。
今回ミラノで実証した循環型梱包材のコンセプトは、展示会に限らずさまざまな分野への展開が期待されています。
三菱ケミカルグループとPOETIC CURIOSITYが提案したのは、単なる新素材や新しい梱包方法ではありません。素材を提供するだけでなく、その素材が使われた後も資源として循環し続ける仕組みまでを含めて設計する、新しいものづくりの考え方です。
将来的には、海外展示会やアートフェア、博物館展示などにおいて、使用後の梱包材を回収・再資源化し、次回展示向けの梱包材として再利用する仕組みづくりを目指しています。
作品輸送のたびに新たな梱包材を製造・廃棄するのではなく、「展示会を超えて価値が循環する梱包材」を新たなスタンダードとして定着させることが期待されます。
さらに、その可能性は展示会やアート分野にとどまりません。精密機器や医療機器、高級家具、工業製品など、高い保護性能が求められる輸送分野への応用も期待されています。
展示会の裏側にある梱包材を、次の価値を生み出す資源へ。
今回の取り組みは、ポリエチレンと3Dプリンティング技術を活用しながら、資源循環と物流の両立を目指す新たなソリューションの可能性を示しています。

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