ポリエチレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE

3Dプリンタ向け材料としてのポリエチレン:マテリアルリサイクル適性を備えた素材

3Dプリンタ向け材料としてのポリエチレン:マテリアルリサイクル適性を備えた素材

ポリエチレン(PE)は熱劣化が少なく再生利用に適した素材です。3Dプリンティングで生じる廃材の再利用ニーズが高まる中、日本ポリエチレンでは、優れた造形性と高いリサイクル適性を兼ね備えた3Dプリンタ向けポリエチレン(3DPEシリーズ)を提供しています。

はじめに:3Dプリンティングにおける材料の再利用ニーズ

3Dプリンティングにおいて、造形過程で発生する廃材やサポート材の再利用ニーズが年々高まっています。その背景には、材料コストの上昇に加え、資源循環への社会的要求が強まっていることがあげられます。3Dプリンティングでは、造形失敗品やサポート材が全使用材料の数十%を占めることもあり、ロスが多くなってしまう場合があります。
こうした状況に対し、3Dプリンティングの代表的な方式である熱溶融押出方式(FDM/MEX)には、使用する材料面で有利な点があります。熱溶融押出方式では、加熱により溶融して再び成形できる熱可塑性樹脂が使用されます。この熱可塑性樹脂はマテリアルリサイクルが可能であるため、造形過程で発生した廃材やサポート材を粉砕しペレット化することで、再び原料として活用することができます。つまり、廃材の再利用によって材料ロスの削減とコスト最適化を実現できる可能性があります。では、熱溶融押出方式に用いる材料のマテリアルリサイクルには、どのような課題があるのでしょうか。

熱溶融押出方式に用いられる材料の課題

材料をマテリアルリサイクルによって循環利用することは、ロス削減やコスト最適化につながる一方、繰り返しの加熱によって材料が劣化し、性質が変化してしまうという課題があります。また、この劣化の度合いは材料によって異なります。
3Dプリンティングの溶融押出方式では、ポリ乳酸(PLA)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)が代表的な材料として広く使用されています。しかし、これらの材料は加熱による劣化が起こりやすく、強度の低下や溶融時の流動性の変化が生じやすいという問題があります。
PLAは加水分解や熱分解が進みやすく、ABSは繰り返し加熱されることで分子構造が変化し衝撃強度が低下しやすいため、再利用時に物性変化が生じやすい傾向があります。

熱溶融押出方式に適したマテリアルリサイクルが可能なポリエチレン

      • ポリエチレンは、繰り返し加熱しても材料特性が変化しにくく、再生材として利用しやすいことから、マテリアルリサイクルに適した素材の一つとされています。

    一方で、従来のポリエチレンは結晶性が高い樹脂であるため、3Dプリンティングでは次のような理由から不向きと考えられてきました。

  • 反り:造形物の底面がプリントベッドから浮き上がる現象
  • 変形やひび割れ:収縮による内部応力が原因で発生する現象
  • 寸法精度の低下:収縮により、造形物の寸法が設計値と一致しなくなる現象

日本ポリエチレンでは、独自の分子設計技術を用いて、熱溶融押出方式に適した3Dプリンタ向け用ポリエチレンを開発しました。この技術により、反りやひび割れを抑制するとともに、造形中の寸法安定性を向上させています。
その結果、マテリアルリサイクル適性と良好な造形性を両立した3Dプリンタ向けポリエチレングレードとして、3DPEシリーズを展開しています。

3Dプリンタ向けポリエチレングレード(3DPEシリーズ)を用いたマテリアルリサイクルにおける物性変化

  • マテリアルリサイクル(MR)適性を評価するため、3DPE02を用いて以下の2種類のサンプルを準備しました。

  •  

  • サンプルA:マテリアルリサイクル率※が100%のサンプル(3DPE02の廃材のみを利用した条件)
    サンプルB:マテリアルリサイクル率※が80%のサンプル(3DPE02の廃材に、再混錬のたびに3DPE02のバージン材を添加した条件)

検証方法としては、以下の工程1~3を1サイクルとして、マテリアルリサイクル適性の検証を行いました。
工程1:熱溶融押出方式3Dプリンタで造形品を作製する
工程2:造形品を粉砕する
工程3:粉砕した廃材に必要に応じてバージン材を添加し、押出機を用いて溶融混練し再度ペレット化する
※マテリアルリサイクル率は、工程3の際に添加する粉砕済みの廃材の混合割合(wt%)を表しています。

MFR変化率

サンプルAの廃材のみの条件でも、MFRの変化率は約10%と比較的安定しています。一方、サンプルBのように廃材に20%の新材を添加するとMFRの変化はほとんどなく、バージン材と同じ造形条件で使用できます(図1)。


図1 マテリアルリサイクルによるMFR変化率
(MFR0:バージン材のMFR、MFRn:n回繰り返し利用後のMFR)

衝撃強度

マテリアルリサイクル率100%、80%のいずれの条件でも、20回の繰り返し利用後においてバージン材と同等の衝撃強度を維持しています(図2)。
これは、3DPE02が適度な柔軟性と高い耐衝撃性を備えていること、さらにポリエチレン自体が再利用時に劣化しにくい特性を持つことによるものと考えられます。


図2 引張衝撃強度の比較

色変化

マテリアルリサイクル率100%、80%のいずれの条件でも、20回の繰り返し利用後において外観の色変化が小さいです(図3、4)。


図3 サンプルA(マテリアルリサイクル率100%)の外観変化



図4 サンプルB(マテリアルリサイクル率80%)の外観変化

まとめ

3Dプリンティングでは、造形失敗品やサポート材などの廃材が発生するため、材料ロス削減や資源効率の観点から再利用ニーズが強まっています。熱溶融押出方式で主に使用されるPLAABSは繰り返しの熱により物性変化が生じやすく、再利用時には物性管理が必要となる場合があります。

一方、ポリエチレンは熱による物性変化が少なく、繰り返し利用しても性能を維持しやすいため、マテリアルリサイクルへの適用が可能な素材の一つといえます。日本ポリエチレンでは、造形性とリサイクル適性を両立させた3Dプリンタ向けポリエチレン(3DPEシリーズ)を提供しています。

詳細に関するお問い合わせはこちら

免責事項
本記事に記載された試験結果、技術情報、推奨事項等は、弊社が蓄積した経験および実験室データに基づいて作成したもので、異なった条件下で使用される製品にそのまま適用できるとは限りません。
従いまして、お客様の製品、使用条件にそのまま適用できることを保証するものではなく、それらの活用に関してはお客様で責任を持って判断する必要があります。
弊社はいかなる場合においても、本製品を単独または他の製品と組み合わせて使用した場合の、製品への適合性及び本書に記載された用途における市場性と安全性については保証しません。

CONTACTお問い合わせ

お仕事のご依頼・ご相談はお気軽にご相談ください。
お客様に最適なソリューションをご提案いたします。