ポリエチレンガイドPOLYETHYLENE GUIDE

ノントルエン対応の溶剤可溶性ポリエチレン「レクスパール™」で革新的な用途展開へ

ノントルエン対応の溶剤可溶性ポリエチレン「レクスパール™」で革新的な用途展開へ

日本ポリエチレンの樹脂設計と重合技術によって、溶剤可溶性を大幅に高めたポリエチレン系樹脂を開発しました。トルエンやキシレンなどの芳香族溶剤だけでなく、シクロヘキサンやテトラヒドロフランにも可溶であり、ノントルエン化による環境負荷低減に貢献します。

ポリエチレン樹脂の溶剤可溶性

ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は、優れた物性バランスと汎用性を兼ね備えており、幅広い用途で使われています。一方で非極性かつ高結晶性であるため、溶剤への可溶性は低く、加熱したトルエンやキシレンなどの芳香族溶剤にしか溶解しません。
また、ポリオレフィンを基材とするシーラントやインキ用途では、ポリオレフィン骨格を持つ材料との相性が良好なケースが多いため、溶剤に溶解可能なポリオレフィン系材料が求められています。 さらに、ノントルエン化の流れを受けて、各業界で芳香族溶剤の使用抑制が進んでおり、環境負荷の低い溶剤にも可溶なPE系材料の開発が不可欠となっています。

レクスパール™ ETとは

レクスパール™は高圧法により製造された低密度ポリエチレン(LDPE)をベースに、アクリレートを主体とするコモノマーを共重合したPE系樹脂です。
その中の一つであるレクスパール™ ETは、エチレン-メチルアクリレート(MA)-無水マレイン酸(MAH)共重合体で、共重合成分に由来するさまざまな特性を備えた高機能ポリエチレンです。
本記事では、レクスパール™ ETの開発品である溶剤可溶タイプおよび高流動タイプについて、特長である優れた溶剤可溶性を中心にご紹介します。なお、レクスパール™の全般的な紹介はこちらをご覧ください。

開発品の特長

レクスパール™ ETの開発品グレードである溶剤可溶タイプと高流動タイプについて、それぞれの特長をご紹介します。

    • 溶剤可溶タイプ(MFR:11 g/10 min、MA含量:30 wt%
      溶剤可溶タイプは、ETのカタロググレードと比較してMAの共重合比率を大幅に高めることで、結晶性を低下させ、溶剤可溶性を向上させたグレードです。材料自体は非常に高い柔軟性と透明性を持ち、異樹脂とのブレンドにおいても親和性が高く、微分散化によって、耐衝撃性の向上に寄与する改質材としても効果を発揮します。
    • 高流動タイプ(MFR:600 g/10 min、MA含量:23 wt%)
      高流動タイプは、当社の重合技術による分子構造制御により、高MFRと高MA含量の両立を実現した開発品です。極めて高い流動性を活かし、ホットメルト用途への適用や、バイオマス原料との相溶化材としての利用も想定されています。
      一般的に、PEにフィラーを添加すると耐衝撃性などの物性が低下するため、相溶化材の使用が必要になりますが、その一方でコンポジットの流動性が低下する傾向があります。高流動タイプは、相溶化効果を維持しながら、流動性の低下を抑制するという特長を持っています。

開発品の機能性

    溶剤可溶タイプと高流動タイプには、以下のような代表的な機能があります。
    • 溶剤への溶解性
      両タイプは、結晶性を抑えた分子構造設計と高極性成分の導入により、溶媒和されやすく、優れた溶解性を示します。これにより、カタロググレード中で最も溶剤溶解性の高いET350Xと比較しても、非芳香族系溶剤であるシクロヘキサンやメチルシクロヘキサンに溶解可能であり、さらにテトラヒドロフランやメチルエチルケトンなどの極性溶媒にも良好な溶解性を示します。
      一部の溶剤では高濃度に溶解し、トルエン、キシレン、シクロヘキサンでは40 wt%まで溶解が可能です。これは、一般的なPEでは得られない特性であり、さまざまな用途への展開が可能です。

*80℃溶解後、23℃に冷却 〇:可溶、流動性を維持 △:白濁、または低流動性 ×:不溶、または析出して白濁化

  • 接着性
    レクスパール™ ETに含まれるMAHは、-NH2基や-OH基などの極性官能基と反応し、結合を形成することが可能です。さらにMAの共重合による高極性化により、各種材料に対して良好な接着性を発現します。
    溶液として基材に塗布した場合も、極性材料への密着性に加え、PE骨格をベースとしているため、一般的なポリエチレンに対しても高い接着性を示し、幅広い材料への塗布が可能です。
  • 相溶性
    両タイプともMAおよびMAHを共重合しているため、極性樹脂やフィラーに対して高い相溶化効果を発揮します。これにより、フィラーや無機粒子の分散性を向上させたり、異樹脂との相溶性を高めたりすることが可能です。
    高流動タイプは、低分子量かつMAHの配合バランスを最適化した分子設計により、バイオマス由来フィラーとの相溶化においても流動性の低下を抑制できます。
    バイオマス由来のフィラーブレンドや複合プラスチックリサイクルにおける相溶化材の事例については、こちら(複合プラにもフィラー分散にもこれ1つ 相溶化材で叶える、環境対応と性能の両立)をご覧ください。
  • 柔軟性
    両タイプはいずれも高い柔軟性を持ちます。MA含量の高さによる結晶性低下により、溶剤可溶タイプはショアA硬さ63、高流動タイプはショアA硬さ58を示します。図1は、溶剤可溶タイプの4 mm厚のシートで、手で容易に変形できるほど柔軟な材料です。

図1 溶剤可溶タイプの柔軟性(4 mm厚シート)

  • 透明性
    透明性は結晶性の制御によって調整可能であり、溶剤可溶タイプは結晶性を抑えた樹脂設計により高い透明性を示します(図2)。透明性の指標であるヘーズ値を比較すると、カタロググレード中で最も透明性の高いET350Xが4.7 %であるのに対し、溶剤可溶タイプは1.9 %と、より高い透明性を発現しています。

2 透明性比較(左:レクスパール™ ET量産グレード,右溶剤可溶タイプ

想定用途

開発品の特長を活かした、主な想定用途ご紹介します。

  • 塗料、インキ
    両グレードが持つ優れた溶剤可溶性を活かし、塗料やインキ用途に展開可能です。
    本用途では、溶剤可溶性に加えて、顔料や添加剤との相溶性も重要な要素となりますが、レクスパール™は高い極性とMAHによる結合形成により、分散安定性の向上に寄与します。
  • 接着剤
    溶剤可溶性と高い接着性を兼ね備えているため、接着剤用途にも適しています。
    トルエンフリー製品への対応が可能で、異種材料との接着性にも優れています。
    さらに、PE骨格を持つことから、一般的なPEとの接着性も良好であり、多層ラミネート構造におけるPE層や金属層との接着層としての利用も可能です。 

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